
PC-9801初代機カタログより
NECがかつて発売していたPC-9801は、日本標準機として1980年代後半から1990年代前半の10年以上に渡りもっとも普及していたPCだった。
2016年(平成28年)9月13日に国立科学博物館は、初代PC-9801を未来技術遺産第00221号に登録している。
PC-9801(初代機)スペック
- CPU
μPD8086(i8086コンパチブル)を5MHzで稼働
コプロセッサ使用可(i8087)。 - ROM
N88-BASIC(86)とモニタ96KB - メインRAM
128KB、最大640KBまで増設可能 - ビデオRAM
96KB(増設不可) - テキストRAM
12KB - テキスト表示
80文字×25行、80文字×20行、40文字×25行、40文字×20行※いずれかを選択可
文字及びグラフィック記号(248種)
キャラクタ単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)。 - カラーグラフィックス表示(専用高解像度ディスプレイ使用時)
640×400ドット1画面
640×200ドット2画面
※いずれか選択。8色表示 - モノクログラフィックス表示
640×400ドット8画面
640×200ドット4画面
※いずれかの画面を選択 - 画面合成
可(グラフィック、テキスト優先順位設定可) - バックグラウンドカラー
8色表示可(専用高解像度ディスプレイ使用時) - ボーダーカラー
8色表示可(専用高解像度ディスプレイ使用時を除く) - 漢字表示(オプション、グラフィックス/テキスト両画面に表示可)
■PC-9801-10(JIS第一水準漢字ROMボード)※後継機はPC-9801-11。
文字構成:16×16ドット
文字種類:JIS第一水準漢字2965種ユーザー定義文字188種
画面構成:40文字×20行(専用高解像度ディスプレイ使用時)
■PC-9801-12(第2水準漢字ROMチップ)
PC-9801-10かPC-9801-11いずれかが必要。
■PC-9801-18(拡張漢字ROMチップ)
JIS第一/第二に含まれない漢字388字の追加用。PC-9801-10かPC-9801-11いずれかが必要。 - キーボード
(スカルプチャータイプ) JIS標準配列準拠、テンキー、コントロールキー、10ファンクションキー、キャピタルロック可、HELP、COPY、BS、INS、DEL、XFER、NFERキー。
セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - サウンド
オプション - FDD
8インチ2DのFDD I/F:標準装備(PC-9881 / PC-8881相当品用)
5インチFDD I/F:標準装備(PC-8031相当品用) ※2D - HDD
接続可(インタフェースボード別売) - シリアルI/F
RS232C仕様準拠 - パラレルI/F(プリンタ)
セントロニクス社仕様準拠 - カセット(CMT)I/F
オプション(300ボー/1200ボー)※拡張スロット内に実装 - CRT出力
デジタルRGB出力:セパレート信号出力(TTLインタフェース、カラー)
モノクロディスプレイ出力:コンポジットビデオ信号出力(輝度変調) - ライトペン接続
モノクロディスプレイ端子に接続可 - 拡張スロット
16ビットのCバス(6個搭載、うち1個はROMボード実装済み) - カレンダ時計
月、日、時、分、秒。NiCd電池でバックアップ - サービスコンセント
2個 - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 消費電力
平均70W,最大141W - 使用条件
10~30℃,20~80%(但し結露しないこと) - 外寸法
本体:(W)500×(D)400×(H)125㎜
キーボード:(W)480×(D)210×(H)65㎜ - 重量
本体9.6kg
キーボード2kg - 主な添付品
キーボード、電源ケーブル、マニュアル、お客様登録カード、保証書他 - 本体価格
298,000円 - 発売
1982年11月
PC-9801のハード特徴等
PC-8801の上位機として開発されたので、共通している仕様も多いが、8ビット機と16ビット機の違いはかなり大きい。搭載BASICは機械語関係を除いて互換性があるので、雑誌などで掲載されていたPC-8801用のN88-BASICプログラムはほぼそのまま使えるし、速度の体感差は実感できた。
拡張スロット
IBMのPC/XTでは、筐体をあけなければ拡張ボードの搭載はできないが、PC-9801では本体バックに簡単に抜き差しができる16ビットのCバスが採用された。ここへ挿し込むためのボードは各社から発売されたが、仕様も例によって公開されていたので、 自作ボードも取り付けられたし、またOh!PCではPC工作入門と題した企画が連載されたのは覚えている人も多いことだと思う。
※自作ボードの製作にはPC-9801-04「ユニバーサルボード」を使用。
グラフィックスの高速化
メインCPUが描写するのはPC-8801と同じだが、NEC開発のGDC(Graphic Display Controllerの略、μPD7220)をグラフィックス画面とテキスト画面に1個ずつ採用し(計2個)、高速性を実現させると同時に、メインCPUの負担を軽くさせた。テキストRAMとグラフィックス用のビデオRAMは独立している。
グラフィックスは、640×400ドット1画面、640×200ドット3画面で8色表示が採用された。テキスト画面は80×25行/80×20行/40×25行/40×20行の4つのモードがあり、切り換えて使うようになっている(8色表示)。
PC-8801でもグラフィックスとテキストの画面合成ができるが、常にテキスト画面が上位にくるのに対し、PC-9801ではテキスト画面を下位に順位付けすることができる。
なお、E/F/Mモデルからは、ビデオRAMが倍増化され、市販ソフトの動作条件に「初代機とUを除く」とあるものが多くなった。
漢字表示
PC-8801ではグラフィックス画面に漢字表示させるが、PC-9801ではグラフィックス/テキスト両方に漢字表示させることができる。
初代機とモデルチェンジ機Eではオプションだったが、F/MモデルはJIS第一水準が標準装備され、VM/VFモデルからはJIS第二水準も標準装備された。R型番機以降は、拡張漢字も標準装備された。なお、PC-8801ではMKIIからJIS第一水準が標準装備され、MKIIMRからJIS第二水準も標準装備された。
記録メディア
8インチFDDを接続させるのが前提なので、カセットインタフェースは搭載されない(オプション)。8インチFDD I/Fは2HDなので、5インチ/3.5インチの2HDFDDも接続できた。
変わったところでは、PC-8800/PC-8001用の2DのI/Fも搭載されており接続でき、モデルチェンジ機Eモデルにも搭載された。
搭載CPU
インテルからライセンスを得て開発されたμPD8086(i8086コンパチブル)を搭載。IBMのPC/XTでは8088を使用していたが、このCPUは内部処理は16ビットだが、データパスは8ビットなので、データ通信は8ビットずつの2回になる(命令セットは8086と同じ)。
8086は内部処理/データパスとも16ビットで、当時の国内メーカー製16ビット機も8088を採用する例が多かった中、CPUをけちらなかったのは画期的だったと言える。
8ビットCPUは64KBまでしかメモリを扱うことができないが、16ビットCPUは1MBまで扱うことができる。但し、8086もZ80系の延長上にあるCPUで、メモリ空間を64KB毎に区切って使うセグメント方式になっている(32ビットCPUの386からはセグメント幅が4GBまで拡張された)。
システム構成
簡易なシステムは本体+カセット(オプションのカセットインタフェースが必要)+家庭用テレビ(RFコンバータが必要)となるが、まさかこのようなことをする人はいなかっただろう。本体+専用CRT+8インチFDD+プリンタに漢字ROMを搭載、というのが標準的なシステムで、こうすると100万円近い金額になった。それでも、当時そういったシステムを保有していた人がいたのもまた事実であった。
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